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プレスリリース「平成13年6月21日 東京新聞夕刊」

ものづくり地政学
赤池 学
第4部 国土を活かす 16
水経ビジネス 下

関西電力から誕生した、水系の塵芥をリサイクルする廃棄物処理会社のかんでんエルファーム。その展開の裏にある理念は、自然との共生であり、地域との共生である。

今年4月、その名も「共生」というベンチャーが産声を上げた。出資は、関西総合環境センター、近畿コンクリート工業、関西電力、亀井製陶の4社による。産業廃棄物のリサイクルを目的としており、窯業廃土や下水汚泥焼却灰、ガラスくずなどを再利用した「無焼成レンガブロック(商品名、アーザンブリックス)」の製造工場を兵庫県姫路市に建設中であり、10月に完成予定だ。

この無焼成レンガブロックは、岐阜県土岐郡笠原町の亀井製陶が1997年に開発したものである。土岐郡が位置する東濃地区は、美濃焼の産地であり、笠原町は国内有数のタイル産地として発展してきた。焼ものの産地では、河川上流での原料の採石により、流出した土で川が白濁するなどの環境問題が存在した。亀井製陶は、環境に対する配慮から、窯業廃土の利用研究を進め、この無焼成レンガブロックの商品化に行き着いたのである。

無焼成による加工技術の確立は、窯業廃土だけではなく、前述した汚泥類やガラス陶磁器のくず、高炉スラグ、石灰灰など実に多様な産業廃棄物の再利用を可能にした。また、焼成しないことで、製造過程において二酸化炭素を発生しないという付加価値もついた。ガーデニング資材、公園の歩道や学校・病院の施設材として、さまざまなところで利用されている。

関西電力グループでは、この商品に着目し、発電所のダム湖の汚泥、貝殻、建設廃材などのリサイクルを目的に、昨年から事業化の検討を推し進めてきた。ダム内水面にたまる流木リサイクルの次に、ダム水面下に蓄積する土砂や汚泥の再原料化を構想したのだ。

リサイクル法の強化などで、産業廃棄物の再利用化は着実に進んではいる。しかし、一方でまだまだ行き場のない産業廃棄物はたくさん存在する。本業が生み出す廃棄物をいかに環境に優しく処理するか。どのような形で再生させ、地域社会にその価値を還元できるか。こうした課題を河川水系の視点で事業化したところに、関西電力グループの先見性がある。ダムづくりのために築いてきた水系自治体とのネットワークに、リサイクル資源を逆還流させる同社の取り組みを大いに評価したい。

(平成13年6月21日 東京新聞夕刊)

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